子育て世代の移住で重視することの一つが教育ではないでしょうか。今回お話を聞かせてくれたのは、沼田町教育委員の伊藤淳さん。進学や就職のために一度はまちの外へ出ましたが、23歳のころにUターンし、稲作中心の農業に携わっています。PTA会長も務めた経験を持つ伊藤さんは、教育委員会メンバーや町民の皆さんと協力しながら、ハード・ソフトの両面から子どもたちのための環境づくりに取り組んでいます。

小学校から中学校への
ステップを緩やかに。

Q.ズバリ、沼田町の教育の特徴って何ですか?
伊藤さん:いきなりですね(笑)。まず挙げられるのが沼田町一貫・連携教育です。小学校と中学校の垣根を飛び越え、お互いの乗り入れ授業や運動会をはじめとする行事の合同開催などを行っています。
Q.取り組みを始めたのはどうしてですか?
伊藤さん:少し前の沼田町では、全国学力・学習状況調査の結果が全国平均を下回っていました。今に始まった話ではありませんが、ゲームに熱中するあまり家庭学習の時間が少ないというのも課題だったり。コレは早めに手を打たないとマズいという気運が高まり、教育委員会が中心となって、沼田町一貫・連携教育を強力に推し進めることになりました。
Q.その狙いは何だったんですか?
伊藤さん:昔は子どもの数も多く、お兄ちゃん・お姉ちゃんから遊びや勉強を教わったり、お互いの学校の様子を聞いたりすることもできました。ですが、核家族化や少子化などで子どもたちを取り巻く環境も変わりました。それで、小学6年生が中学校に登校し、数学や理科の先生から専門的な学びを教わることで学習に対する興味の幅を広げているのです。もちろん、中学生とふれ合う機会も設けています。小学校から中学校へのステップを緩やかにして、学習内容や学校生活の差に驚かないようにするのが目的です。
Q.なるほど!いつから始めたんですか?
伊藤さん:この取り組みは以前から議論がありましたが、「沼田小学校」が新校舎になった2012年と時を同じく、各教室に電子黒板やタブレットを取り入れるなど、ハードの面も整えました。
Q.効果のほどはいかがですか?
伊藤さん:小中学校の先生方が手を携えて沼田町一貫・連携教育に合わせたカリキュラムを組んだり、時には親御さんが起床時間のチェックや読書の推進など生活習慣の改善に協力してくれたり、まちぐるみで教育体勢を整えてきました。おかげで、最近の全国学力・学習状況調査では平均を上回るようになったんです。

「沼田学園」構想で、
教育はますます面白く。

Q.ソフト面での教育支援にはどういったものがありますか?
伊藤さん:沼田高校が閉校し、町内の高校生は深川市などの近隣都市に通わなければなりません。そこで、高校生のお子さんがいる家庭は月額1万円の手当てが受けられます。小学生なら漢字検定、中学生は英語検定にかかる費用を補助する制度もあり、教育に関わる経済的な負担の軽減は手厚いほうではないでしょうか。他にも、学生ボランティアなどによる、夏休み・冬休みの学習サポートもあります。
Q.進学に伴って人材が外に流れてしまう心配もあるような…。
伊藤さん:子どもたちが沼田町に残ってくれるのが一番ですし、新しい分野の仕事を立ち上げるという心意気もウエルカム。ただ、都会に比べると就職先は多くないので、まちを出て行ったとしても、ことあるごとにふる里をPRするような「沼田町応援団」の気持ちを抱いてもらえれば良いと思っています。
Q.まちを好きになる子どもを育むということですね。
伊藤さん:その通りです!今も子どもたちには田植えや化石掘り、「夜高あんどん祭り」への参加といった沼田町独自の体験授業を行って郷土愛を育んでいます。
Q.最後に、今後のホットなトピックスは?
実は2018年度には沼田町一貫・連携教育をさらに進めた「沼田学園」構想をスタートします。その中では、ふる里沼田町を愛し誇りを持ち、世界へ発信していく「ぬまた学」を取り入れますし、ネイティブスピーカーの外国人が授業にあたる「ハローイングリッシュ」に取り組みます。沼田町の教育はもっと面白くなり、質も高まっていくと思いますよ!